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ライス降臨

車谷長吉の『武蔵丸』という短編集を読む。その中の一遍に「一番寒い場所」という作品がある。そこに、右翼少年の逆木大三郎クンのエピソードとして週刊プレイボーイ(昭和43年9月24日号)が取材している形で次の引用が出てくる あるいはまた、帝国ホテルの…

ひきこもり

アレクサンダル・ヘモン『ノーホエア・マン』(岩本正恵訳 白水社)*1を読んでいる。タイトルはビートルズの曲から。Nowhereはアルクのサイトにある英辞郎によると、形容詞で「無駄な、無意味な」という意味。熟語では"nowhere kid"というのがあって、「ひき…

今日も今日とて更新

川上弘美『光ってみえるもの、あれは』 大鳥さん(主人公・江戸翠の遺伝子上の「父親」)とキタガーくん(翠の担任の北川先生、国語担当)が、とにかく良い。最後の方になるにつれて、だんだんと物語的になっていき、一応主人公の「成長」のような感じで終わ…

今までさぼってた分を更新します

T・R・ピアソン『甘美なる来世へ』 ユーモアあふれる饒舌な語り口に乗せられて、情けなくも切ないところへと連れて行かれる感じ。ベントン・リンチの「どうしてこんなふううになっちゃったんだろう」的な気持ちがそこはかとなく浮かび上がってくる。脱線に告…

絵本独り十選+三

id:kasuho氏の日記(http://d.hatena.ne.jp/kasuho/20040316#p7)に触発されて、絵本独り十選+三をやってみる。十三になってしまったのは、どうしても絞りきれなかったから。『カーヴァーズ・ダズン』*1というのもあるし、ご勘弁。基本的に、小学校就学前(…

真実をめぐる実験

ポール・オースター『トゥルー・ストーリーズ』(ISBN:4105217089)読了。 とても楽しく読めた。「これは本当の話である」(p.8)という言葉の通り、前半の「赤いノートブック」はオースターが見聞きした様々な「偶然」の出来事を書いていて、「その日暮らし…

レイ・カーヴァー

ちょっと立ち読みしただけなので満足なことは言えないが、平石貴樹・宮脇俊文編纂『レイ、ぼくらと話そう―レイモンド・カーヴァー論集』(ISBN:4523292868)という評論集が面白そうだった。冒頭にはカーヴァーへのインタビューの翻訳がある。そして、10人の…

フロイトと熊

『熊の敷石』 堀江敏幸 中篇三編を収録した作品集。講談社文庫に入ったので、さっそく買ってみた。活字が恐ろしく大きいことにまずびっくりした。表題作「熊の敷石」は、主人公の見た夢の話から始まって、現在の出来事と過去の回想が織り交ぜられ語られるの…

ゲド戦記

すこし話題からずれるが、ずいぶん前に朝日新聞(2003.3.23)に載った川上弘美による『アースシーの風』評がなかなか良かったのを思い出して、探してみた。第四巻(『帰還』)以降の主人公ゲドの「変化」を肯定的に捉えていて、ゲドの「弱さ」、「役立たずさ…

ひとみ座のゴーリー公演

人形劇団ひとみ座*1によるエドワード・ゴーリーの人形劇「the bicycle」を見てきた*2。今日が千秋楽ということで、駆け込みで観劇。内容はゴーリーの『優雅に叱責する自転車』(ISBN:4309264352)と『不幸な子供』(ISBN:4309264972)を合体させたもの。この…

鶴亀鶴亀

前回の日記で大島弓子の『つるばらつるばら』を読んだが、その後にトルーマン・カポーティの『遠い声 遠い部屋』(河野一郎訳 新潮文庫)を読んでいたら、主人公ジョエルが訪れるスカリイズ・ランディングの館に住むランドルフという男が「うへっ鶴亀、鶴亀…

うそばなし

『あるようなないような』 川上弘美 ふだんはあまりエッセイというのを読まない。なんで読まないかといわれてもうまく答えられないのだが、なんとなく、なのだ。で、この川上氏のエッセイは良かった。川上氏の小説作品と変わらないくらい面白かった。それは…

考えない人

いやはや、元旦とはいっても勉強以外何にもすることがないなあ。 というわけで、気分転換に一昨日買ってきた「考える人」を読んだ。今回は読書特集なんだけど、様々な人が「大人のための三冊」を挙げている。参考までに、いくつか抜粋。 小川洋子 グレン・バ…

今年の三冊

今年の三冊を選んでみました。 『カンバセイション・ピース』 保坂和志 『ニシノユキヒコの恋と冒険』 川上弘美 『雪沼とその周辺』 堀江敏幸 今年は保坂和志の快作が出版され、さらに川上弘美と出会った年だった。 保坂氏の講演を聴きに行ったり、『書きあ…

週刊ブックレビュー

ゲストは川上弘美。新作の『ニシノユキヒコの恋と冒険』について。 http://www.nhk.or.jp/book/review/review/2003main1.html ブックレビューは国家放送局の力(?)でいいゲスト呼べるんだから*1、司会者*2ももっと勉強してきたほうがいいと思った。もうち…

小説なんか読んでるバヤイじゃないくらいヤバイ。のだが、川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』を途中まで読む。ニシノユキヒコって、人間なのか幽霊なのか、それとも、もっと抽象的な意味で「段階」(?)のようなものかもしれないと思った。が、そういっ…

以前買った創元推理文庫版の『ポオ小説全集4』の解説は、江戸川乱歩が書いている。約50年以上前に書かれたものだが、新仮名使いになっていてとても読みやすい。その中で、彼は探偵小説の起源としてポーを扱っていて、トリックや探偵の性格、設定、探偵小説…

昨日買った新潮と文學界に関して。まずは新潮の保坂和志の新連載「小説をめぐって」を読む。『書きあぐ』も出したことだし、ほぼ日でもインタビューされてる*1し、最近は小説論(というか創作論)に傾倒してる感じ。それと、この前行った「ブンガク畑でつか…

IKKI 1月号 『号泣する準備はできていた』 江國香織 『オーデュボンの祈り』 伊坂幸太郎 IKKIの新連載は鬼頭莫宏「ぼくらの」。アフタヌーンで連載してた「なるたる」の作者。最近のIKKIは、アフタヌーンからひっぱってきたマンガが多い気がする。内容は子…

帰りに渋谷のブックファーストに行くと、欲しい本が色々出てた。月末貧乏なので来月までおあずけ。とりあえず書いておくと、エドワード・ゴーリー『弦のないハープまたはイアブラス氏』、T・R・ピアソン『甘美なる来世へ』*1、江國香織『号泣する準備はでき…

今日は朝っぱらから更新。 また「どこでもない場所」を見つけてしまった。チャールズ・シミック『世界は終わらない』。シミックはユーゴスラビア出身で、現在はアメリカで執筆を行う詩人。翻訳者の柴田元幸氏はこの本の序文でシミックの詩の特徴を簡潔かつ的…

「群像」12月号 とりあえず保坂和志×阿部和重対談「現代小説の方法」。阿部氏は『シンセミア』でがちがちの「構造」小説を書いた(らしい)で、保坂氏は逆に構造とか明確な「物語」からは離れたところで小説を書いている。小説の方向性がほとんど正反対の二…

『恋の絵本』 遠藤周作 このあいだ古本屋で仕入れた本。単行本は1971年に刊行。買ったのは1983年に出た文庫本。要するに、内容は30年以上前のもの。遠藤周作は1923年生まれだから、50前後に書いたということか。恋愛論といえば、古今東西(?)様々な本が書…

『パレード』 吉田修一 『パーク・ライフ』に続き二冊目の吉田修一。出版順は逆なのだが。ぐいぐいと読ませる感じで、一気に読んでしまった。同居している4+1人の人々が視点を変えて描かれる。全体的に冷めた人間ばっかりなので、語りのヴァリエーション…

中央大学多摩キャンパスに保坂和志の講演会を聞きにいってきた。中央大学は噂のとおり山の上にあった。学祭中らしく、いろいろな催しをしているのだが、なにせ敷地がばかでかいので、なんとなく散漫な盛り上がり*1。建物がでかく空も広くて、めまいを起こし…

『ユリイカ』11月号 特集:マンガはここにある 最近殊にマンガの特集が多いユリイカですが、今回は(も?)批評というよりは様々な作家の紹介という感じ。 夏目房之介の著作権に関する話が良かったが、とりあえず現時点での整理という意味合いが強い。 江口…

通学の途中で川上弘美『物語が、始まる』の中の「婆」という短編を読んでいると次のような箇所に遭遇した。以下引用。 「ここはどこなんですか?」婆に聞いた。 「どこって、どこでもないような場所よ」 「どこでもない場所?」 「そうそう、どこでもないの…

『カンバセイション・ピース』 保坂和志 上で書いたことを時々考えるようになったのも、保坂和志の小説と出会ったことも関係しているかもしれない。『カンバセイション・ピース』は今年の7月に出た小説で、結構分厚い本なのだけれど、ストーリーを説明する…

『神様』 川上弘美 ちょっと前から続いている川上弘美熱。もう治らないのか。こうなってくると新刊の『光ってみえるもの、あれは』*1も読みたくなってくるのが不思議だ。 *1:ISBN:4120034429

昨日は「ブンガク畑でつかまえて」というシンポジウムに行ってきた。パネリストは池内紀、堀江敏幸、中村和恵、柴田元幸、沼野充義。外国文学の研究、翻訳の楽しみを存分に語る企画だった。どのパネリストもかなり「偏った」本を翻訳・研究していて、その「…