鶴亀鶴亀

前回の日記で大島弓子の『つるばらつるばら』を読んだが、その後にトルーマン・カポーティの『遠い声 遠い部屋』(河野一郎訳 新潮文庫)を読んでいたら、主人公ジョエルが訪れるスカリイズ・ランディングの館に住むランドルフという男が「うへっ鶴亀、鶴亀!」と言う場面があった。
こまかないきさつは省くが、ジョエルが見知らぬ女性の幽霊を見たという話をして、それが信心深い*1召使のズーに知れたらえらいことだというので、このランドルフの台詞がある。ランドルフは本気で言っているというよりも、幽霊の話に怖がっているふりをしていて、ジョエルの話を信じていない*2。原文では単に“Don't tell me!”と言っているのだが、これを訳者の河野一郎氏は、その微妙な揶揄のニュアンスを捉えて、「鶴亀、鶴亀」と訳したのだろう。少々古い言い方ではあるが…。
で、カポーティ大島弓子が共通点があるのかわからないが*3、「つるかめ、つるかめ」という驚き・軽い恐怖を表す言葉が、なんとなく、つるんと目に入ってきたということで、普段はあまり使わない言葉なので、Googleで調べたり、辞書で調べたりしたということで、特に結論のある話ではないです。
ちなみに、『広辞苑』第五版で「鶴亀」を調べると、2番目の意味で「縁起を祝い、または縁起直しに言う言葉。つるかめつるかめ。」というふうに載っていて、「縁起直し」を引くと、「悪い前兆を吉方に変えるよう祝いなおすこと」という意味が載っていました。

*1:というか、霊やら悪魔やらを信じ、ただひたすら踊り祈るような「狂信的な」信仰だが…

*2:この「幽霊」の話は、最後の方で明らかになるが、ここでは秘密にしておく。

*3:よく考えてみれば、何か共通点があるかもしれない…。ゴシック性とか…。でも、カポーティの初期作品を読んでいると、萩尾望都の『ポーの一族』とか思い出します。