レイ・カーヴァー

ちょっと立ち読みしただけなので満足なことは言えないが、平石貴樹・宮脇俊文編纂『レイ、ぼくらと話そう―レイモンド・カーヴァー論集』(ISBN:4523292868)という評論集が面白そうだった。冒頭にはカーヴァーへのインタビューの翻訳がある。そして、10人の研究者や翻訳者が様々な観点からカーヴァー作品の面白さを語っている。執筆者には編纂者の二人と、柴田元幸巽孝之青山南千石英世など(立ち読んだだけなので、他の評者の名前は思い出せない…目についた人だけ)*1
面白そうと感じたのは、平石貴樹氏の「あとがき」をちらっと読んだため。手元に本がないのでうろ覚えだが、最近の「小説衰退」の風潮*2に関して、「小説をまったく読まないか、自分の好きな本しか読まない」「小説が好きなのではなく、『小説を読んでいる自分』が好きな人が多い」というような指摘に、なるほど、と思った(自戒をこめつつ…)。また、作品を丁寧に荷読んで、その面白さを書くという、地味であるが誠実な態度がとても素晴らしいと感じた。しかも、「手堅く、小難しい批評」というよりもカーヴァーの小説の「様々な楽しみ方、面白さ」を伝えようとしていることにも感動。
村上春樹による翻訳によって紹介されたこともあり、カーヴァー作品は比較的手に入れやすいと思うので、未読の方は是非。
ちなみに、ティム・オブライエンの新刊『世界のすべての七月』(ISBN:4163226907)が村上訳で出るそうです。Amazonでは発売日3/10になってます。

*1:追記。検索してたら、慶應大学巽孝之ゼミの公式HPに本の執筆者一覧が載っていた。

*2:平石氏がこう書いていたかは正確には覚えていない。むしろ、小説そのものよりも小説批評の言説が先行している現状を指摘していた感じ。