フロイトと熊

中篇三編を収録した作品集。講談社文庫に入ったので、さっそく買ってみた。活字が恐ろしく大きいことにまずびっくりした。表題作「熊の敷石」は、主人公の見た夢の話から始まって、現在の出来事と過去の回想が織り交ぜられ語られるので、小説内の時間の推移を把握するのが難しかった。が、それがむしろ面白かった。その「夢」の出所は、小説を読み勧めていくうちにだんだんと明らかになっていく(ようにみえる)。最初のほうでは全くわからなくてとまどってしまうが、読み進めていくうちにじんわりと面白さがこみ上げる。堀江敏幸の作品は、この「じんわり」とした面白さがいい。しかも、読み終わったあと「すっきりしない」ところもいい。
この文庫版は、川上弘美が解説を書いている。これもまた偶然也。運命を感じる*1川上弘美の『神様』という短編集の表題作「神様」には、ことばをしゃべる熊が出てくる。
熊つながりで。ジョン・アーヴィングホテル・ニューハンプシャー』では、主人公の一家がフロイトという名の芸人(?)から熊を買う。この熊は本物の熊で、バイクのサイドカーに乗るのが大好き。さらに余談だが、アーヴィングには『熊を放つ』という作品もある。
好きな本たちの中にささいな共通項を見つけ出すと、ちょっと楽しくなる。

今回から表紙が柴咲コウから小雪へと変わった。素直にジャケ買い川上弘美柴田元幸インタビュー*2は、まだT・R・ピアソン『甘美なる来世へ』を目下読書中なので、まだ読まないで残しておく。

*1:まあ、堀江氏も川上氏も有名どころであるし、なんとなく読者層がかぶるようにも思えるから、運命ではなく思惑通りといった感じか。

*2:前号は逆パターンid:pee450:20040114#p2