うそばなし

『あるようなないような』 川上弘美
ふだんはあまりエッセイというのを読まない。なんで読まないかといわれてもうまく答えられないのだが、なんとなく、なのだ。で、この川上氏のエッセイは良かった。川上氏の小説作品と変わらないくらい面白かった。それは、書かれていることが事実とか虚構というのではなくて、そうしたフィクション/ノンフィクションの枠組みをふっとあいまいにさせるような瞬間が描かれるからで、その文章の雰囲気はエッセイになっても変わってない。それはタイトルに如実にあらわれている。「あるような」(=現実)と「ないような」(=虚構)というのが読点なしに繋がって書かれ、「ような」というはっきりさせない(?)表現にすることで、日常の中で境界侵犯がさりげなく起こる可能性を示しているともいえる。
そういえば本書には「境目」というエッセイが入っている。