ゲド戦記

すこし話題からずれるが、ずいぶん前に朝日新聞(2003.3.23)に載った川上弘美による『アースシーの風』評がなかなか良かったのを思い出して、探してみた。第四巻(『帰還』)以降の主人公ゲドの「変化」を肯定的に捉えていて、ゲドの「弱さ」、「役立たずさ」が後半の物語の原動力になっているのではないか、と書いている。
ゲド戦記』における主人公の変化は、たしかに「強くてへこたれないヒーロー」像を求める読者には不満なものなのかもしれないが、私にとってはとても面白く感じられた。その点について、川上氏特有のことばによってうまく評しているところがいいなと思った。
もちろん、このことによって最初の三部作の面白さが損なわれるわけではない。ここでは主人公ゲドの(そして、著者ル=グウィンの)姿勢や考えが「一貫していない」ことが、逆に面白さを作り出している、ということが重要なのだ。