ロック、ロッカーの定義とは何か?id:obs:20031024に面白いのがあった。

昼ごろに起き出して、酒をこよなく愛し、来る日も来る日もギャンブル。楽器にはとにかく金をかける。楽器の借金に困ると女をも質に出す。そして4畳半。

バンドのメンバーとは「音楽性の相違」とかでケンカが絶えない。

これじゃあ廃人だ。もしかしたらロッカーと廃人はコインの裏表なのかもしれない*1
 その定義(?)に触発されたかどうか謎だが、古いマンガを読み返してみた。森脇真末味の『おんなのこ物語』と『緑茶夢』*2である。特に、『おんなのこ物語』の方は、id:obs氏の言うところの「バンドのメンバーとは「音楽性の相違」とかでケンカが絶えない」というところがばっちり当てはまる。
 『おんなのこ物語』は題名とは裏腹に、女の子がさっぱり出てこない。唯一出てくるヒロイン・尚子もおざなりな感じ(俺は結構好きだが)。作者としては「男」が描きたかったのだろう。時代設定は70年代後半から80年代初頭くらい。絵柄はデッサンの取れた、「少女マンガ」らしくないニューウェーブという感じ。
 主人公の八角(Dr)は最年少で、まだ高校生。気性が荒くカリスマ性のあるなリーダーの仲尾(Vo,G)、冷静なマネージャータイプの水野(Ba)、ネクラで仲尾と対立する桑田(G)。八角と仲尾の愛憎半ばのやりとりを中心に「ステッカー」というバンドが内部崩壊していくという暗ーい内容ながら、この時代のインディーズシーンを描いている名著(と言われている)*3
 面白いのは、キャラがしっかりとたっていること。登場人物の性格の描き分けや、ストーリーの構成なんかが好きなのだ。しかも、男がとてもセクシーに描かれている。残念ながら絶版なので、読んでみたい人は古本屋などで探してみてください。
 『緑茶夢』の方は逆に、ばらばらなバンドがだんだんまとまっていくという話。『おんなのこ物語』に出てきた水野が「スラン」というバンドのマネージャーとして出てくる。この水野とわがままで繊細なバンドのヴォーカル・安部弘の関係を軸に物語が進む。こちらは、少し前に小学館文庫に再録された*4
 基本的に森脇真末味のマンガでは、愛情と憎悪を抱きあう男二人の関係を軸に物語が進む。仲尾と八角、水野と弘の関係は、『Blue Moon』で孤児の双子・英一と英二の関係としてより強烈に描かれる*5。『Blue Moon』以降の森脇真末味は読んでないからなんとも言えない。でも、この時期の「少女マンガ」は男女間の恋愛ということから、男性同士の関係*6が多く描かれたのは色々な人が指摘していると思う。俺の「少女マンガ」に対する興味は、80年代前半の森脇真末味吉田秋生のマンガに大きく影響されていると思う。

*1:思いっきり偏見がはいってます

*2:『おんなのこ物語』は「おんなのこストーリー」、『緑茶夢』は「グリーン・ティー・ドリーム」と読む

*3:まあ俺はこの時代の音楽やバンドに疎いのでよくわかりませんが…

*4:ISBN:4091914519

*5:同じ双子の物語として吉田秋生の『YASHA』があるが、ここで描かれる双子・静と凛の関係はまた別の機会にでも話をしてみたい

*6:ホモソーシャルな関係?