通学では電車に乗っている時間が長いので、大抵は文庫本を読むか、外の風景を見るともなしに見ながらぼーっとしている。帰りは疲れているので、席に座って帰ることにしている。きょう座席に座って文庫本を読んでいると、いきなり「どこでもドアー」の声。ふと右側のサラリーマン風の男性を見ると、折りたたみ式の携帯電話をぱかっと開けて、画面を見ている。おそらくメールが届いたのだろう。それから彼は返信メールをぷちぷちと打っていた。周りにいた人間もあの音声に気付いていたはずだ。あの男性は携帯電話の着信音声が「大山のぶ代」の声でいいのだろうか、と妙な心配をしてしまう。その隣の女性をちらっと見てみると、特にその着メロに動揺してはいない。彼女も黙々とメールを打っている。もしかして、あのドラえもんの着メロを可笑しいと感じたのは俺だけなのだろうか?俺は着メロとか社会の流れと微妙にずれてきているのだろうか?これが歳をとるということだろうか?というようなことまでは考えなかった。しかし、何かしらの居心地の悪さを感じたのは事実だ。